世界最古の大学ナーランダ大学から学ぶ、教育の本質

世界最古の大学として知られるナーランダ・マハーヴィハーラ(ナーランダ大学)。

その歴史は、教育の普遍的な価値と共通の課題に対する一つの答えを示唆しています。

本稿では、ナーランダ大学の創設から衰退、そして21世紀における復興までの歴史を辿りながら、その教育理念や現代社会における意義について深く掘り下げていきます。

ナーランダ大学から学び、現代の教育にどのように生かすことができるのか、考えていきましょう。

 

古代インドの知の拠点

長い歴史をもつ大学は、世界各国に存在しています。例えば、ヨーロッパ最古の大学イタリアのボローニャ大学(1088年)、イギリスのオックスフォード大学(1096年)、スペインのサラマンカ大学(1134年)などです。

インドはこれらの大学よりさらに古く、ナーランダ大学が設立されたのは5世紀であり、世界最古の大学の一つといわれています。

 

ナーランダ大学は、仏教の開祖である釈迦が説法を行ったとされるインド、ビハール州ナーランダに、427年に創建されました。創建から12世紀まで約800年もの間、学術的な仏教の研究・教育の中心地として、その名声を高めてきました。

 

ナーランダ大学は寄宿制の大学で、中国、韓国、日本、チベット、モンゴル、トルコ、スリランカ、東南アジアなど、世界中から人が集まってきました。

最盛期には、1万人以上の生徒と、千人以上の教師がいたといわれています。日本でも有名な玄奘(別名 三蔵法師)もこの大学の学生でした。

多くの知識人たちを魅了したのは、その学術様式からでした。ナーランダ大学は、様々な分野の議論を統合し、知識を包括的に受け入れていたのです。仏教だけでなくバラモン教や哲学、天文学、建築や彫刻、数学や医学など、現代の総合大学といった役割をもち、多様な領域を研究する教育施設にもなっていました。

ナーランダはサンスクリット語で、「蓮(知恵の象徴となる花)を授ける地」という意味を持っています。歴史家の間では、古代世界で最も偉大な学問の中心地の一つと評価されていることもうなずけます。

こうして学問の中心地として栄えたナーランダ大学ですが、1200年頃、イスラム教徒のゴール朝侵略によって、仏像や高層建築の図書館は破壊され、豊富な文献も燃やされてしまいました。

 

大学復興

長い間、歴史の中に眠っていたナーランダ大学ですが、2006年、当時のインドの大統領アブドゥル・カラーム氏「ナーランダ大学復興構想」を提案しました。仏教学の中心として栄えたナーランダ大学を、アジアにおける教育や学術研究の交流拠点として再興させるというアイデアです。

2007年にフィリピンで開催された第2回東アジア首脳会議(EAS)で紹介され、この構想に関する会議が、シンガポール、東京、北京、そしてニューデリーで行われました。2009年第4回東アジア首脳会議(EAS)で共同発表がなされ、インド議会での可決を経て、ついに2014年9月に約800年ぶりに、大学が最初の学生たちを迎え入れました。

 

復興の意義

ナーランダ大学復興に向けて東アジア首脳会議(EAS)が示した目的は、ナーランダ大学と東アジア首脳会議(EAS)参加国の優れた大学や研究機関との連携することで、学生、学者、研究者、教員が協力し、人類の結束の精神を表現した学びの共同体を作ることでした。つまり、東アジアの異なる国々の人々が互いに協力し、知識や経験を共有しながら学ぶことができる場所としてナーランダ大学の復活を目指したのです。

新しいナーランダ大学は、ビハール州ラージギルのナーランダ地域にキャンパスが設立され、歴史学部、環境学部、仏教学部、人文科学部、経営学部を有し、博士・修士課程が提供されています。2023年度は、1000人以上の学生がナーランダ大学で学んでいます(短期プログラム等も含む)。そして、古代ナーランダ大学の特徴であった多様性、新たな知識の共同創造、国際的な視野といった価値観は、新しいナーランダ大学でも大切にされています。

 

まとめ

ナーランダ大学の歴史は、教育の普遍的な価値を示唆しています。知識の共有、多文化共生、そして人類全体の進歩への貢献。これらの理念は、現代社会においてもますます重要性を増しています。

古代と現代における、学問の中心地として再スタートしたナーランダ大学。教育の原点に立ち返る機会、教育の重要性を私たちに再認識させてくれる存在と言えるでしょう。

 

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Last Updated on 2025-03-05