インドの高等教育は、多様な学びのスタイルが共存しています。学生の状況に応じて選択できるような学習スタイルが構築されているのです。本稿では、特徴的な3つの学習スタイルを中心に、インドの高等教育について紹介します。
インドにおける多様な学習スタイル
インドの大学では、Regular learningと呼ばれる従来型の通学スタイル（日本の大学と同様に平日の午前や午後に授業があり、キャンパスに通学するスタイル）に加え、Distance learning、Open learning、NCWEBなど、多様な学習スタイルが提供されています。
これらの多様な学習スタイルは、学生の経済状況、社会的な背景、個人的な事情など、様々な要因によって選択されます。例えば、経済的な理由のある学生や就労しながら学びたい社会人は、Distance learningやOpen learningを選択することで、仕事と学業を両立させることができます。また、地方に住む学生は、Distance learningによって、地元を離れることなく高等教育を受けることができます。
Distance learningの現状と特徴
Distance learningは、通信教育やインターネットを利用した学習スタイルのことを指し、インドにおいて近年普及してきました。特に、新型コロナウイルス感染症の流行を契機に、その需要は高まりました。India Timesの調査によると、2021年から2022年にかけてのDistance learningへの入学者数は170%の伸びを示し、その人気の高さがうかがえます。
Distance learningの強みは、その柔軟性とアクセシビリティにあります。場所や時間に縛られずに学習できるため、学生は自分のペースで学習を進めることができます。また、遠隔地に住む学生や、仕事と学業を両立させたい学生や社会人にとっても、Distance learningは魅力的な選択肢となります。
一方で、Distance learningには、社会的交流の機会が少ない、注意散漫になりやすい、複雑な技術が必要となるなどの課題も指摘されています。特に、学生同士の交流や教員との対面でのコミュニケーションが制限されることは、学習意欲の低下や孤立感につながる可能性があります。
Open learningの特徴とメリット・デメリット
Open learningは、対面で試験や週に数回授業を受け、それ以外の日は自宅からオンラインで受講する学習スタイルのことを言います。Distance learningと同様に、柔軟な学習スタイルとして注目されています。Open learningでは、学生は自分のペースで学習を進めることができ、経済的な負担も軽減されます。また、オンライン学習と通学を組み合わせることで、学生はよりアクティブな学習体験を得ることができます。
しかし、Open learningには、Distance learningと同様の課題も存在します。特に、学生へのサポート体制が不十分な場合、学習に困難を感じる学生もいるかもしれません。また、Open learningのコースは、必ずしも全ての大学で認定されているわけではなく、その質にはばらつきがあることも懸念されます。
NCWEB：デリー大学独自の女性向け学習プログラム
NCWEBは、デリー大学が提供する女性向けの特別な学習プログラムです。土曜日または日曜日、およびデリー大学の学期休暇中に授業が行われ、デリー首都特別地域に居住する女性のみが対象となっています（年間授業日数は、50日）。NCWEBは、経済的な理由や社会的な制約により、通常の大学に通うことが難しい女性に、高等教育の機会を提供することを目的としています。
NCWEBの強みは、その歴史と実績にあります。1943年に設立されて以来、多くの女性がNCWEBを通じて高等教育を受け、社会で活躍してきました。しかし、NCWEBはデリー大学独自のプログラムであり、他の大学では同様のプログラムは提供されていません。
まとめ
インドは若者が多く、都市と地方で異なる背景を持つ人々が共存する国です。その多様性から生まれるさまざまな教育ニーズに応えるため、インドでは学び方が進化しています。オンライン学習と対面学習を組み合わせた柔軟なスタイルなど、新しい可能性が広がっています。教育の未来を切り開くインドの挑戦は、日本の高等教育にも多くのヒントを与えてくれるはずです。
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Last Updated on 2025-03-03
