インドとの交流を取り入れた「国際探究学習プログラム」の教育的意義とは?  <北星学園大学文学部 准教授 妹尾克利先生に聞きました>

弊社では、日本全国の中学校以上の生徒様向けに、インドとの交流を取り入れた「国際探究学習プログラム」をご提供しております。
このプログラムの中では、日本や自分の学校について動画を作ってインド人に発信し、フィードバックを受けるという活動が含まれています。
(実施例はこちらの「国際探究学習プログラム」よりご覧ください。)

 

このプログラムの教育的意義について、メディア教育・映像教育論を専門に研究をされている妹尾克利先生にお話を伺いました。

妹尾先生は、北星学園余市高等学校ご在籍時に、弊社の国際探究学習プログラムを学年全体にご導入頂きました。また、北星学園大学の准教授にご就任後も、ゼミの学生様の卒業研究の一環として、本プログラムを取り入れて頂いております。

実際にプログラムを導入された妹尾先生に、プロジェクト型学習(PBL)としての映像教育論の観点からお話を伺いました。

 

妹尾克利先生

北星学園大学 文学部 心理・応用コミュニケーション学科 准教授
中央大学政策文化総合研究所 客員研究員
ご専門:メディア教育・映像教育論

 

Q. 学習指導要領の改訂を受けて「探究的な学び」への取り組みが進む昨今ですが、通常、探究学習を進める上でどのような難しさがあるのでしょうか?

探究学習を進める上では、生徒の意欲を引き出すことや、そもそも活動が何を目指しているかの視点の共有を行うことが必要になります。ただ、実際はグループ学習をやることが目的化してしまい、テーマ設定に失敗して途中で方向性を見失ってしまったり、生徒の意欲がバラバラのまま進んでしまうということが起こりがちです。

 

Q. その中で、探究学習のアウトプットとして動画を活用することには、どのような教育的効果や利点があるとお考えですか?

今の時代において、動画は、探究学習のアウトプットとして最も適したツールの一つだと考えています。理由は次の通りです。

 

①ゴールがわかりやすい

ジョン・デューイの説いた「学習者が知識を求めるための動機づけに不可欠な4要素」に、「談話」「探究」「制作」「表現」があります。動画制作にはこの4要素がプロセスとして内包されています。

談話:グループでの話し合い

探究:情報収集、取材

制作:動画の制作

表現:動画の発表

自然な流れでこれらに取り組むことができることから、学習者にとってわかりやすいプログラムになります。

 

②成果物として共有しやすく、熱量が伝わる

動画は情報量が多く、熱量が伝わる成果物として最適です。動画として成果物を作ることで、他の先生方や保護者などにも見てもらえます。父母懇談会での待ち時間に生徒達が作った動画を流した所、保護者が「うちの子がこんなことしているの?」と驚くような場面もありました。

また、過去の作品が後輩にとっての学びのリソースになっていき、次年度に取り組む際にもそれを見せることで大きな刺激になります。先輩の動画を見た生徒達が、翌年度に自分たちが取り組むのを楽しみにしているような様子も見られました。模造紙やスライドでの発表ではなかなかここまでの反応は見られず、熱量が伝わりやすい動画の特徴が表れていました。

 

20年ほど前に動画教育の効果を提言した当時は、高度な編集ソフトや専門的な技術が必要で、現実的ではない部分がありました。しかし、今日ではGIGAスクール構想が前倒しになり、一人一台端末が配備されたことで当時の障壁がほぼなくなりました。無料で高機能な編集ソフトもあり、編集ソフトも生徒達の方が詳しいような時代です。身近なICT端末を使って、情報メディアの特性を理解しながら制作に取り組むことができます。

 

生徒様作成動画の1シーン(インド映画を学校敷地内で再現)

 

Q.インドへの動画発信を活動として含んだ「国際探究学習プログラム」の意義はどのような点にあるとお考えですか?

「国際探究学習プログラム」の動画制作は、「インド人に見せる」というミッションがあります。明確なミッションがあることで、「なぜ今探究学習が必要か」といったような意義を説明せずとも、生徒達が率先して動き出し、プロセスの中で自然と学んでいってくれます。探究学習でよくあるような、方向性を見失ってしまうという恐れがありません。

 

また、視聴者も「インド人」と予めわかっているため、相手(視聴者)の立場に立って、相手を意識した情報提供の仕方を自然に考えることができます。日本語で内輪受けのものを作ったとしても、わからないという反応が来るのははっきりしています。インド人が見ても意図が伝わるものを作るのは大変ですが、それが生徒達のやる気を喚起し、「挑戦しよう」という意欲に繋がっていました。

 

相手に伝えるための方法も各グループで工夫を凝らしており、翻訳アプリも活用して英語の字幕をつけたり、AIも活用して英語でナレーションを付けたりと、今あるテクノロジーやサービスを駆使しながら取り組んでいました。コミュニケーションが目的であり、英語の正確さが求められるわけではないため、英語にも肩の力を抜いて取り組めたようです。

 

生徒様作成の日本紹介動画の1シーン(「いただきます」を解説)

 

Q.「国際探究学習プログラム」の導入をご検討中の先生方へ、メッセージをお願い致します。

映像制作活動をコミュニケーションのツールとしてインド人と交流し、映像メディアを構成するプロセスを体験することは、一人ひとりが主体性を獲得できる効果的な学習経験になります。

生徒達はプロセスの中で自ずと工夫しながら、教員が想像していた以上のことを学び取ってくれると感じました。

 

妹尾先生、インタビューにご協力をいただきありがとうございました。

 

本プログラムは、負担なく、自然な形で探究学習と国際理解学習、ICT活用を同時に実現できるプログラムとして、総合的な探究の時間や総合的な学習の時間、英語、情報等、様々な教科で取り入れて頂いております。

ご興味をお持ち頂いた学校様は、まずはお気軽にお問い合わせください。

Last Updated on 2024-12-14