インドの仕事事情!就労環境と最新トレンド

アジア開発銀行(ADB)は、2024年9月の報告書で、インド経済が今後も活発に成長を続けると予測しました。2024年から2026年にかけて、インドの経済は年平均で7%以上の高い成長率を維持すると見られています。

本稿では、成長を続けるインドにおける就労について紹介します。

 

インドの働き方と価値観

日本では週5日勤務が一般的ですが、インドでは「週5日または6日勤務」「隔週5日または6日勤務」など、企業によって勤務日数が異なります。

残業については、日本ほど長く残業をしない傾向があり、定時退社の企業が多いようです。雇用にかかわる法律としては、超過勤務(最大1日8時間かつ1週間で48時間を超える)賃金として通常の報酬の2倍が支払うこと、原則として1日の労働時間が10時間(休憩時間を含めて12時間) を超えてはならず、かつ1週間の勤務時間が60時間を超えてはいけないと定められています。

ところで、仕事観に関する面白い調査結果があります。日本財団の『18歳意識調査「第62回 –国や社会に対する意識(6カ国調査)–」
報告書』
によると、
仕事を選ぶ上で何を重視するかという質問で、日本とインドは共に「給与の高さ」を最優先事項として挙げています。しかし、2番目に重視することとなると、両国間で違いが見られました。日本では「仕事の楽しさ」を挙げる人が多かったのに対し、インドでは「独立できるかどうか」を重視する人の割合が高かったのです。また、インドでは6位に「自国に貢献できるか」が入っていました。
日本では「独立できるかどうか」も、「自国に貢献できるか」も、共に上位10項目にも入っていませんでした。この結果から、インドでは起業家精神が旺盛なこと、そして、自国へ貢献しようという意思を多くの若者が持っていることが伺えます。

 

パートタイムワーカーについて

フルタイムの働き方以外に、インドにもパートタイムワーカーとして働く人たちもいます。

本業以外の収入を求める会社員、主婦などもパートタイムワークへの関心が寄せられており、インドで有名な求人ポータルサイトが実施した調査では、回答者の 68% 以上が、フルタイムの 9 時から 5 時までの仕事に加えて、副業をしていることが明らかになりました。

 

特に新型コロナウイルス感染拡大以降、急速に拡大しているのが【ギグワーカー】と呼ばれる、ITプラットフォームを活用して単発の仕事を請け負う働き方です。

ボストン・コンサルティング・グループのレポートによると、最大9,000万人の雇用を創出するポテンシャルがあると発表しています。また、関連するスタートアップの新規参入や投資も増えています。

ここからは、インドで人気のギグワークの仕事について紹介していきます。

 

オンライン家庭教師

コロナ禍で急成長したのは、オンライン家庭教師の仕事です。オンライン教育サービスの需要が拡大する中、英語、数学、科学、会計など、さまざまな分野で専門知識を持つ家庭教師が求められています。1時間あたり500ルピー(885円)から1500ルピー(2,655円)と、高収入が期待できることも魅力の一つです。

 

Web開発

HTML、CSS、JavaScript、そしてWordPressといったスキルがあれば、個人でウェブサイトの制作・デザインを請け負うことができます。フリーランスのウェブ開発者として、クライアントから依頼されたウェブサイトを制作し、報酬を得ることができるということです。1つのウェブサイトの制作で、1万5千ルピー(26,550円)から4万ルピー(70,800円)程度の収入が期待できます。

 

コンテンツライティング

テクノロジーや金融、健康など、さまざまな分野の情報をわかりやすく伝える文章を書く仕事は、需要の高い仕事の一つです。日本でもフリーランスの仕事として人気の高い仕事の一つですね。記事の長さや単価が変わり、例えば、短い記事であれば10ルピー(17.7円)から100ルピー(177円)程度の報酬となります。

※1ルピー=1.77円(2024年12月現在)

※インドの月収中央値:約32,000ルピー(約57,000円)

 

こうしたギグワークの広がりの背景には、インドの都市部では、地方からの出稼ぎや日雇い労働者が多いこと、また、ギグワークの多くが世襲的な職業選択に捉われないことなどがあります。

 

インドの学生のアルバイト状況は?

実名でQ&AができるオンラインサイトQuoraによると、インドの学生の間ではアルバイトは人気ではないそうです。人気ではない理由はいくつかありますが、以下がその一例です。

・インドの60%が農村部のため、バイトの機会自体が少ない

・家族にバイトより勉強だけに集中するように言われる

・勉強とバイトの両立が難しい

日本では、学生が収入を得るため、あるいは就業前の経験を積むためにアルバイトをするのが一般的ですが、インドでは学生がアルバイトをするのはハードルが高いようです。その一方で、就業前の経験を積む手段として、インターンシップに参加する学生が多いという特徴があります。

インド学生のインターンシップに関する内容については、こちらをご覧ください。

 

インドの就労に関する課題

経済成長率が高く様々なサービスが誕生しているインドですが、一方で若者の失業率の高さが問題になっています。毎年数百万人の若者が労働市場に出ており、十分な雇用を生み出す必要性が高まっています。

特に高学歴層ほど失業率が高く、大卒以上の失業率は2000年の約25%から2022年には約29%になっており、4%ほど増加しています。

出典:「India Employment Report 2024」のP283 A4.7c を参考にSHIN EDUPOWER作成

 

その中で新たな産業、グリーン産業とAI分野に期待が寄せられています。

グリーン産業では、再生可能エネルギーや持続可能性に関する人材が不足しており、政府や民間企業による教育プログラムが始動し、人材育成に力を入れています。また、AIの普及により、新たな雇用が生まれています。政府もAI人材育成に力を入れており、今後AI分野での雇用はさらに拡大すると予想されます。

 

まとめ

インド経済は活況を呈し、就労環境も変化しています。コロナ以降急速な拡大をしたギグワークなど、ITプラットフォームを活用した柔軟な働き方は、収入源の多様化や、従来の職業概念にとらわれない働き方を可能にしています。

労働市場では、グリーン産業やAI分野における人材需要が高まり、新たなスキルを持った人材が求められています。

このような状況下で、インドの教育機関は、社会の変化に対応した人材育成に力を入れています。グリーンテクノロジーやAIに関する教育プログラムが拡充され、実践的なスキルを身につける機会が提供されているのです。

教育改革が進むインドの若者たちの今後の動きや、国を挙げたインドの取り組みにも注目していきたいです。

 

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Last Updated on 2025-03-03