インド数学:長い歴史と文化が育む計算力と論理力

インドといえば、「ゼロ」の概念を生み出した国であり、2桁の掛け算を暗算するなど、数学に強いというイメージを持つ人も多いのではないでしょうか。インドには古代から数学が発達し、現代社会にも大きな影響を与えています。

この記事では、歴史、有名な数学者、独自の数学体系、教育事情などを中心にインドと数学の関係について紹介します。

 

インド数学の歴史

インド数学の歴史は、紀元前3世紀ごろまで遡ります。

古代インドの数学者たちは、ゼロの概念や十進法の発明に貢献してきました。

これらは、現代の数学の基礎となっており、数学の発展において重要な役割を果たしてきました。

 

ゼロの記号が生まれた背景には、実用的な必要性と思想的な要素があるとも言われています。

仏教やヒンドゥー教の基本思想においては、「空」や「無」の概念が重要視されており、宇宙の創造や破壊などが表現されていました。こうした宗教・思想的背景により、インドの人々は「無い」ことを表す記号を持つことに抵抗感がなく、「ゼロ」を表現するようになったと考察されています。

インドの有名な数学者

India Today は2021年「数学の日:National Mathmatics Day」に合わせて、数学の分野に重要な貢献をしたインドの数学者トップ10人を紹介しています。

 

  1. アーリヤバータ(Aryabhata Mathematician):月食や日食、地球の自転、円周率の近似などの概念で知られています。
  2. ブラフマグプタ(Brahmagupta Mathematician):ゼロを数として言及し、代数と算術に貢献しました。
  3. スリニバサ・ラマヌジャン(Srinivasa Ramanujan Mathematician):数学的解析と数論での業績で知られています。
  4. P.C. マハラノビス(P.C. Mahalanobis Mathematician):統計学に貢献し、インド統計研究所を創設しました。
  5. C.R. ラオ(C.R. Rao Mathematician):推定理論、統計的推論、線形モデルに貢献しました。
  6. D.R. カプレカール(D. R. Kaprekar Mathematician):さまざまな数のクラスを記述し、カプレカール定数を発見しました。
  7. ハリシュ・チャンドラ(Harish Chandra Mathematician):表現論と調和解析の研究で知られています。
  8. サティエンドラナート・ボース(Satyendranath Bose Mathematician):理論物理学を専門とし、ボース=アインシュタイン統計とその基礎を提供しました。
  9. バスカラ(Bhaskara Mathematician):算術、代数、微分積分学に重要な貢献をしました。
  10. ナレンドラ・カルマルカール(Narendra Karmarkar Mathematician):線形計画問題を効率的に解くカルマルカールのアルゴリズムで知られています。

(出典:India Today “National Mathematics Day 2021: From Aryabhata to Srinivasa Ramanujan, a look at top 10 Indian mathematicians”)

 

現代の私たちが活用している、様々な概念や理論がインドで発見されてきたことがわかります。インドの数学者たちは、それぞれ独創的なアイデアと高度な数学的技術を用いて、数学の発展に大きく貢献しました。

 

インド数学の特徴

ヴェーダ数学

インド数学には、独自の数学体系である「ヴェーダ数学」があります。

ヴェーダ数学(Vedic Mathematics)は、インドの古代数学のシステムであり、スリ・バラティ・クリシュナ・ティルタジ(1884-1960)によって、古代インドの経典から再発見されました。

暗算や計算の簡略化に特化した方法が多く、日本でも、「インド数学の特徴」として話題に上がることが多く、聞いたことのある方も多いのではないでしょうか。

 

ヴェーダ数学の計算方法

ヴェーダ数学の考え方を用いて、計算問題を解いてみましょう。

Ted Talkで紹介された例を基にご紹介します。
(出典:The magic of Vedic math – Gaurav Tekriwal  https://youtu.be/grkWGeq

 

<11の段の計算>

例:32×11の場合

①32を3と2に分ける

②分けた数字を足した和を間に書く (3 + 2 = 5)

③下に並んだ数字:352

 

<10, 100, 1000…に近い数字同士の掛け算>

例:14×12の場合

 

 

 

 

 

①10との差を右に書く(14-10 = 4、12‐10 =2)

②左列:14または12と、斜めにある数の和を書く(14+2=16、12+4=16)

③右列:差同士を掛け、を書く(4×2=8)

④下に並んだ数字:168

 

例:99×97の場合

 

 

 

 

 

 

①100との差を右に書く(99-100 = -1, 97-100 =-3)

②左列:99または97と、斜めにある数の和を書く(99‐3=96、97‐1=96)

③右列:差同士を掛け、を書く(‐1×‐3=3)

④下に並んだ数字:9,603

 

例:996×997の場合

 

 

 

 

 

 

1000との差を右に書く(996-1000=-4, 997-1000=-3)

左列:996または997と、斜めにある数の和を書く(996‐3=993、997‐4=993)

③右列:差同士を掛け、を書く(‐4×‐3=12)

④下に並んだ数字:993,012

 

より詳細を知りたい方は、Ted Talkをご参考ください。

Gaurav Tekriwal. The magic of Vedic math  https://youtu.be/grkWGeq

インド社会における数学

幼少期から数学を学ぶインドの子どもたち

幼児期の保育と教育の指針となるNational Curriculum Framework for Foundational Stage 2022(P61,P117~P122)には、3~8歳における数学教育の方針が記されています。日常生活と関連付けたり、具体物や音声によって学んだり、学び方の工夫をする重要性も説いています。

インドの子どもたちは、プリスクール(3〜6歳が通う就学前学校)から計算を始めます。

また、インドの小学校の教科書では、日本での算数教育と同じように、イラスト付で数や形の概念を説明しています。イラストには、インド人の子どもたちにとって身近なマンゴーや、日常的に主食として食べられているチャパティーが用いられており、算数の概念が日常生活の中にあることを感じさせます。

薄いパンのような主食「チャパティー」

 

人気の職業:エンジニア・医者

インドでは、エンジニアと医師は、その経済力の高さから長年人気の職業となっています。それらの職業に就くことを目的に、工学部や医学部への進学を背景として、多くの人が数学に励んでいます。

※インドの数学教育の詳細については、こちらの記事をご覧ください。

https://shin-edupower.com/ja/mathematicts-india/

 

まとめ

インド数学は、長い歴史と文化の中で、独自の数学体系を生み出すなどして、発展してきました。そして、インドでは幼いころから、数学を学ぶことを通じて、論理的に考え、計算する力を養う教育が行われています。

インド数学の計算方法や論理思考力は、ビジネスや日常生活にも役立つことから、世界中で注目されています。

 

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Last Updated on 2024-07-30