遊びと学びが融合!インド式就学前教育とは

教育改革を推進しているインドでは、就学前教育について、その重要性が認識され、普及が進んでいます。

関心の高まりの背景には、6歳未満における教育が、子どもの発達や生涯にわたる教育に大きな影響を与えるため、全ての子どもが質の高い教育にアクセスできるようにすべきとの考えがあります。

特に、COVID-19以降の基礎的な読み書き能力と計算能力の低下は、インド社会の喫緊の課題です。

National Education Policy (NEP2020)によると、小学生の5千万人以上の生徒が基本的な文章を理解したり、計算(加算と減算)したりすることができない状況になっており、脳が発達する幼児期の教育の重要性が認識されたのです。

本稿では、インドの幼児期における方針(国家カリキュラムフレームワーク)や、プレスクール(日本の幼稚園にあたる)での取り組みについて紹介します。

 

関心の高まる就学前教育

就学前教育の方針

インドの学習指導要領にあたるNational Education Policy (NEP2020)は、インドの教育システム全体の大きな変革を目的としています。NEP2020が定められた際、インドでは初めて就学前教育 (3〜6歳) が正式な学校教育制度に加わりました。

そして、このNEP2020に基づき策定されたNational Curriculum Framework for Foundational Stage 2022(国家カリキュラム フレームワーク)は、インドの基礎教育(就学前教育 (3〜6歳)の3年 +初等教育の前半2年[第1~2学年(6~8歳)]を対象とした教育)の指針となるものです。

このフレームワークでは、就学前教育としては、特に「遊び」 が教育の中心となっています。これは、遊びを通して自然と学び、創造性を育むことができるという考えに基づいています。

日本の就学前教育も、遊びを通して、小学校以降の学習の基盤となる芽生えを培う時期と位置づけています。特に、子どもたちの自発的な活動である遊びや生活の中で、美しさを感じることや不思議さを感じること、そして、自身で試してみたり、方法を工夫したりすることを重要視しています。

インドと日本の就学前教育について、発達段階に沿った取り組みの共通性を感じます。

 

また、インドの就学前教育では基礎的な読み書きと計算能力 の習得も重視しており、将来の学習の基礎を築くことを目指しています。

日本においても、遊びや生活の中で学習の基礎を育むことを目指しています。例えば、数量、文字等への関心を引き出し、感覚を育むため、ものの数や量、形に親しむ経験を重ねたり、標識や文字の役割に気付いたりする活動を取り入れています。

 

さて、インドの就学前教育に関して興味深い点として、このフレームワークには、インドの伝統的な考え方である「パンチャコーシャ・ヴィカス」が取り入れられていることです。

これは、人間を五つの層(身体、感覚、心、知性、精神)から成り立つ存在と捉え、それぞれの層をバランス良く育てることで、人間としての成長を促すという考え方です。

例えば、バランスの良い食事や運動、ヨガを通じて身体の発達だけでなく、感覚や運動能力も向上させます。また、物語や歌、祈りなどは言語能力や集中力を養うとともに、文化への愛着や価値観の形成を促します。

パンチャコーシャの視点から発達を捉えることで、より全体的な教育の実現を目指しているのです。

出典:「National Curriculum Framework for Foundational Stage 2022」を参考にSHIN EDUPOWER作成

プレスクールでの生活

続いて、実際に就学前教育ではどんな取り組みがされているか、見ていきましょう。

インドの就学前教育は、日本の幼稚園にあたる3歳から6歳までの子どもを対象とした教育プログラムで、プレスクールと呼ばれています。

子どもたちは、通常プレスクールに週5日通います。

 

プレスクールでの過ごし方

大きく分けて活動(遊び)と学習の時間があります。

アート&クラフト、戸外遊び、自由遊びは、1日の中で十分な時間をとることを大切にしています。遊びは、子どもたちがリスクとも向き合うことで、問題を解決し、創造性を発揮する機会につながります。

学習の時間には、読み書き(母語:家庭で使われる言語)を行います。インドでは地域によって多様な言語があるため、ヒンディー語など特定の言語を一律に学ぶのではなく、それぞれの「母語」という指定になっているのです。

さらに、計算の時間もあります。これらの時間を通じて、基礎的な知識・技能を身につけることを大切にしています。

 

プレスクールの一日の流れ

朝の登園後は、支度をしたり、自由時間を楽しんだりしています。

開始時間は9:30、ここから一日がスタートし、活動の時間と、学習の時間を組み合わせて、1日あたり、45分/コマ×7コマを過ごしています。

人数が少なく、教材がそろっている場合は、1日4コマほどで、個人での自由な活動の1コマ当たりの時間数を増やし、45分~1時間45分で行っていきます。

出典:「National Curriculum Framework for Foundational Stage 2022」のSection 7.1 AとB を参考にSHIN EDUPOWER作成

また、インドでは、おやつの時間もとても大切な教育機会として考えられています。

おやつについての詳細は、こちらの記事もぜひ御覧ください。

 

こうした様々な活動・学習を終え、プレスクールでの一日が終わります。終了時間は年齢によって変わり、3~4歳は13時、4~6歳は15時に帰宅をします。

 

まとめ

インドの就学前教育は、単に知識を詰め込むのではなく、子どもたちの心身全体の発達を促すことを目指しています。これは、インドの文化や伝統的な教育観が根底にあると考えられます。知識を身に着けることに加え、心身ともに健やかに成長し、社会の一員として必要な資質を育むことを大切にしています。

また、読み書き計算の時間といった学習時間が、取り入れられていることも特徴的です。算数教育に力を入れており、多様な言語があるインドならではの指針ともいえそうです。

インドの就学前教育は、遊びと学びを融合させた教育モデルとして注目されています。

子どもたちの興味や発達段階に合わせた教育、そしてインドの伝統的な考え方を取り入れた教育は、私たちにとっても参考になる点が多いと言えるでしょう。

 

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Last Updated on 2024-10-02