インドで日本語を学べる場所が増加!その理由とは?

英語を話す人が多いイメージのインドですが、実はインドでも3万6000人もの人が日本語を勉強しています。また、近年日本語が学べる場所も増えてきているようです。

この記事ではインドで日本語を勉強する人が増えてきた経緯や、学習者が増えたことによる日本語教育の変化について紹介していきます。

 

インド内の日本語学習者数

2021年の国際交流基金の調査によると、世界では379万人もの人々が日本語を勉強しています。そのうち、インドで日本語を学ぶ学生は、約36,000人とされています

 

インドの日本語学習者数は、2015年から2018年の間で1.6倍近く増加しました。これには、安倍政権時代に、日印の二国間関係が盛んになったことが関係しているといわれています。2017年9月の日印首脳会談で、日本の安倍元首相とインドのモディ首相は、1000人の教師を養成し、インドの100の教育機関で日本語コースを開設することを決定しました。

このコースではインドで日本語教育を主導する国際交流基金が支援を行い、合格者には外務省と日本大使館から修了証書が授与されました。このような政治的に良好な繋がりによってインドの人々は日本に良いイメージを持つようになり、日本語への関心を持つことにも影響したと言えます。

 

2022年までに首都デリーでは52校の中等教育学校、8校の大学が日本語の授業や日本に関連した学位課程を展開しています。その他に民間の日本語学校もあり、インドの子どもたちから大人まで、日本語を勉強する場所は徐々に増えているようです。

 

インド人が日本語を学ぶ理由

日系企業の進出

高い技術力を持ち、世界的にも知名度の高い日本企業の多くは、インド市場にも進出しています。スズキはインドの自動車市場でのトップシェアを占めており、ソニー、東芝、カシオ、ホンダなど、様々な日本ブランドがインドで高い知名度を誇っています。

在インド日本国大使館、総領事館、日本貿易振興機構(ジェトロ)の調査によると、2022年10月時点で、約1400社の日系企業がインドに進出していました。日系企業では、顧客や同僚と日本語でコミュニケーションを取ることができれば、仕事の幅も広がり、キャリアのチャンスも広がります。

現在、インドの大都市にある企業では日本語を話すことのできる人の需要が高くなっています。特に翻訳関連サービスの日本語の需要は高く、現在は競争率が比較的低いため、日本語を学ぶことで高収入の仕事に就きやすくなると言えます。更に、観光業界でも、翻訳者が随時必要とされるため、その幅は計り知れません。観光業界に加えて、輸出企業、大使館、外交団、ビジネス、商業などでの就職も見込まれ、将来の選択肢が広がるきっかけにもなっています。

 

日本のポップカルチャーの浸透

インドでも日本のアニメや漫画は非常に人気があります。『ドラえもん』、『クレヨンしんちゃん』、『忍者ハットリくん』などのアニメを見て育ったインド人も多く、最近では『ONE PIECE』や『NARUTO』等も人気です。

アニメや漫画への興味から、日本語を勉強してみようと考える人も増えているようです。

 

インド内の日本語能力試験の実施状況

日本で英語の試験と言えば「英検」や「TOEIC」が思いつくように、日本語の力を測る試験として「日本語能力試験」(JLPT)が存在します。日本語能力試験は進学や就職の際に日本語の能力を証明することのできる数少ない試験であり、日本語学習者が自分の能力を計れる機会にもなっています。

 

インドでは1993年以前、日本語能力試験の受験会場は首都デリーにしかありませんでした。そのため、他の地域に住んでいる受験生は、わざわざ首都に出てきて受験するか、受験を断念していました。そこで首都以外の都市にも受験会場が必要だと考えた日本語教師グループの働きかけにより、日本語能力試験を実施する都市 が広げられました。現在、インド国内では8つの都市で年に2回試験が実施されています。

インドの人々が自分の日本語の能力をはかる機会や自分のレベルを証明できる試験が充実したことは、日本語学習者の増加を後押ししていると言えるでしょう。

 

日本語学習者が多い地域

インドで日本語を学ぶ学生は、特定の地域に密集しています。その多くの地域がインドの中では大都市として知られる場所です。今回は特に学習者の多い首都デリーと、南部のムンバイ近郊に位置するプネを紹介します。

デリー

首都のデリーでは、約5,300人の学習者が2023年に日本語能力試験を受験しました。デリーはインドの中で一番日本語学習者が多い都市の一つです。デリーにここまで日本語学習者が多いのには、日本語を学ぶことのできる教育機関が充実していることが関係しています。

インドで日本語を学ぶことのできる数少ない高等教育機関のほとんどは、首都デリーにあります。例えば、日本語教育をインドの高等教育で初めて実施したネルー大学は、1979年に日本語専攻課程を開講し、30年間はインドで唯一日本語が学べる大学でした。さらに、大学院で日本語専攻課程を開講しているデリー大学では、日本語能力試験で高いレベルの級を取ることのできる学生も増え、講義のレベルの高さも伺えます。

高等教育機関の他にも、デリーには多数の語学学校があります。在インド日本大使館でも日本語講座を提供しており、政治の中心地でもあるデリーならではの日本語を学習できる場所があります。

 

プネ

一方、インド南部の最大都市ムンバイ近郊に位置するプネでも、約3,000人が日本語を学んでいると推定されています。2023年に行われた日本語能力試験では、デリーに次いで多い約2,700人もの人々が受験しました。

このようなことからもプネは、日本語の全国的な拠点の一つになりつつあると言えます。IT産業が発達しており、「インドのシリコンバレー」になりつつあると言われるプネには、多くの日系IT企業が進出しており、日本人と話す機会も多いため、翻訳や通訳の仕事の需要が高いとされています。

また、この需要の拡大に伴い、日本語を学べる教育機関が増加していることも、更なる日本語学習者の増加に繋がっていると考えられます。

 

まとめ

インドでの日本語学習者の数は、大きな流れとして増加傾向にあります。日本語を学ぶ人が増えた理由は様々な要素がありますが、安倍首相とモディ首相による二国間の関係の強化日系企業のインドへの進出、日本のポップカルチャーの人気は、日本語学習者の増加に大きな影響を与えてきました。

また、日本語能力試験の実施都市の拡大日本語を学ぶことができる教育機関の増加により、更に学習者の増加が後押しされています。日本とインドの経済的・政治的な結びつきの強化に伴って、これからも引き続き日本語学習者は増加していくことが予想されます。

 

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Last Updated on 2024-05-16