現在、世界中の企業でインド人が活躍しています。その理由の一つに、高い英語力があると言われています。インド人は、どうやって英語を学んでいるのでしょうか?
本記事では、インドの英語教育に興味がある方に向けて、インドの英語教育事情についてご紹介します。
なぜ英語力が重要なのか?
グローバリゼーションにより、現代社会では外国との取引や投資、人の移動が活発に行われています。インターネットの発展に伴い、オンラインのサービスは国の垣根を超えて提供されるようになりました。そのような中で、国際的に通じる言語である英語は、コミュニケーションツールとしての重要性が増しています。
インドは英語が話せる人が多いことで知られています。英語でのコミュニケーション能力を活かして、コールセンターや事務作業のようなアウトソーシング業界や、バンガロールを中心としたソフトウェア・IT産業が著しい成長を遂げてきました。
英語力は、インドが国際的に重要な役割を担う上で重要な役割を果たしてきたのです。
インドは英語話者の人口世界一!
World Population Review のデータによると、実は、インドは世界で一番多くの英語話者を抱える国です。
インドでは、英語は準公用語として位置付けられています。
第一言語もしくは共通言語として英語を話す世界のトップ10の国は以下の通りで、インドの人口が圧倒的に多いです。
出典:World Population Review「English Speaking Countries 2023」を参考にSHIN EDUPOWER作成
もちろん、インドの国民全員が英語を話せる訳ではありません。ただ、国内に何百もの言語があるインドでは、公用語のヒンディー語が通じない地域も多くあります。そのため、インド人同士のコミュニケーション言語としても英語が使われています。
様々な民族の人が集まる場所では、標識や看板にも英語が記載されています。
また、都市部の富裕層などでは、家庭でも英語を使って生活している人もいます。世界に誇るインドトップクラスの大学に通う学生の多くは、小学校に入る前からある程度の英語を話せる人も多いようです。
出典:World Population Review「English Speaking Countries 2023」
インド英語はなまりが強く、世界で通用しない?
話者人口が多いと言っても、癖のあるインド英語は世界で通用しないだろうと思う方も多いかもしれません。日本人の英語に日本語の癖が出やすいのと同様に、確かにインド人が話す英語にも特有の癖があります。
ただ、世界を牽引する大企業であるGoogleやMicrosoftのトップは、インドで生まれ育ったインド人です。大手グローバル企業の幹部層にも、今やインド人がいないことの方が珍しい状況です。
上で示した英語話者人口からもわかるように、実は、世界ではアメリカやイギリスのネイティブスピーカー以外の英語の方が多数を占めています。インド人の英語が世界で通用しないといったことは全くなく、インドの方々は高い英語力を活かして世界中で活躍しています。
インドの英語学習環境
インド人は、どのようにして英語を習得しているのでしょうか?
1. 科目としての英語
インドでは、学校教育の早期段階で英語教育を始める取り組みが増えています。
インドの多くの州で、1年生から学校カリキュラムに英語が導入されています。
インドの学校では、1968年以来「3言語方式(Three-language Formula)」が採用されており、以下の3つの言語が学校教育の中で学ばれてきました。
- 母語(家庭言語/地域言語)
- 英語
- ヒンディー語(ヒンディー語が話される州ではその他の現代インドの言語)
ただし、2020年に出された新たな教育方針「National Education Policy 2020 (NEP2020)」では、「3つの言語のうち少なくとも2つがインド固有の言語である場合に限り、学習する3言語は州、地域、学生自身の選択とする」とされています。
2. 教授言語としての英語
また、都市部を中心に、英語で全科目を教える学校に通う生徒の割合も増加しています。
Times of Indiaによると、インドの初等学校〜上級中等学校の生徒の約26%が、英語で授業を行う学校に通っているそうです。(2019-2020年度の調査)
特に首都デリーでは英語で学ぶ生徒が多く、約60%を占めていました。他に、デリー近郊のハリヤーナー州、IT産業で注目されるハイデラバードのあるテランガーナ州、インド第4の都市チェンナイのあるタミル・ナードゥ州などでも、英語で学ぶ生徒の割合が半分を超えていました。
全国的に、1年生から10年生もしくは12年生まであるような大規模一貫校や、中等学校、上級中等学校では英語で授業が行われていることが多いです。これらの学校では、英語を教授言語としている割合が53%を占めていました。
一方、初等教育段階(1年生〜5年生)では多くの州政府が母語から学び始める必要性を強調しているため、英語で学ぶ割合は12.3%に留まっていました。
別の記事でもご紹介した通り、英語を教授言語とする学校では、教科書も全て英語で書かれています。英語だけでなく理科や社会、数学といった他の科目も、幼い頃から英語を「使って」学んでいる環境です。このような教育環境の中で、インド人は高い英語力を獲得しています。
ただし、2020年に出された新たな教育方針「National Education Policy 2020」では、公立学校・私立学校両方に対し、「可能な限り、少なくとも5年生まで、できれば8年生以降も、母国語/母語/地域語を指導媒体とする」という方針が示されており、今後の変化が注目されています。
まとめ
多様な言語が国内に存在するインドでは、英語が準公用語と位置付けられ、異なる母語を持つ人同士のコミュニケーション言語として使われてきました。
また、英語を教授言語として使う学校の数が全国的に増えており、特に首都デリーでは60%を超えています。
英語を学ぶだけでなく、英語を「使って」他の科目も学ぶような教育環境の中でインド人は高い英語力を身につけ、世界で活躍しています。
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Last Updated on 2024-01-20