春を彩る!インドの伝統祭り ホーリー

日本には四季折々の美しい自然と共に、古くから様々な祭りがあり、人々の暮らしに彩りを添えてきました。地域の歴史や文化を背景に、人々が集い、共に時を過ごす大切な場となっています。

インドにも、華やかなお祭りがあります。世界中のインド人コミュニティで盛大に祝われる「ホーリー(Holi)」と呼ばれる祭典です。カラフルな色粉を投げかけ合い、歌い踊りながら春の訪れを祝うこの祭りは、「色彩の祭典」とも呼ばれ、人々の心を一つにする特別な時間です。

本稿では、このホーリーの歴史や文化的な背景、そして実際に行われるお祭りの様子についてご紹介します。

ホーリーの歴史

ホーリーの起源は古く、インドの神話から生まれています。ホーリーまつわる最も有名な伝説の一つは、「プラフルラード」と「ホリカー」の話です。

 

昔々、神ヴィシュヌを心から慕う少年がいました。その少年の名はプラフルラード。ヴィシュヌへの熱い想いは、彼の心を明るく照らしていました。

さて、プラフルラードの父、神ヒラニヤカシプは、天敵の神ヴィシュヌへの崇拝を辞めるように伝えていました。しかし息子が、父の意に反して神様ヴィシュヌを慕う様子を見たヒラニヤカシプは、怒りの炎を燃やします。

ヒラニヤカシプは、プラフルラードを殺そうと企みました。そこで、火に打ち勝つ魔法のマントを持つ娘、ホリカーに頼ります。ホリカーはプラフルラードの妹でもありました。彼女はプラフルラードを騙し、火の中に座らせることにします。

しかし、火の中に飛び込んだ瞬間、奇跡が起こりました。ヴィシュヌへのプラフルラードの熱い想いが、火を打ち消したのです。プラフルラードは無事でしたが、ホリカーは灰になってしまいました。

 

この物語は善対悪の勝利を象徴しており、ホーリーの前夜に行われる「ホリカダハン」という焚き火の儀式で記念されています。

 

文化的な重要性

ホーリーは単なる色彩の祭典ではなく、深い文化的、精神的な意味を持っています。冬の終わりと春の訪れを告げるものであり、愛を祝ったり、過去のわだかまりを許したり、人間関係を修復したりする時でもあります。

ホーリーで使われる色は、それぞれ深い意味を持っています。赤は愛と豊饒、青は神聖と永遠、黄色は幸福と知識、緑は成長と再生を表しています。互いに色を投げかけることは、人生の多様性と統一を受け入れる方法なのです。

社会的にも、ホーリーはカースト、信条、社会的地位といった障壁を取り払い、団結と調和を促します。お祭りの期間中は、誰もが一緒に祝うことで、包括性と共同体としての調和の雰囲気を作り出します。

 

ホーリーの祝い方

準備

では、ここからは実際のホーリーのお祭りについて紹介します。

お祭りの準備は数日前から始まります。人々は家を掃除し、色粉や水鉄砲を買い、お祝いの料理を用意します。お祭りが近づくにつれて、街全体が活気に満ち、人々の心は高揚感で満たされていきます。

 

ホリカダハン

ホーリーの前夜、人々はホリカダハンと呼ばれる焚き火を灯します。これは悪の燃焼と善の勝利を象徴しています。人々は火の周りに集まり、歌ったり踊ったり祈りを捧げます。火の灰は神聖なものと考えられています。

 

本番

本番当日になると、子どもから大人までの人が集まり、色遊びをします。お互いに色粉をかけたり、水風船を投げ合ったり、色水を入れた水鉄砲を使い合ったりし、通りはまるで色彩のキャンバスのようになり、喜びと笑い声で溢れ返ります。

伝統的な歌や踊りもホーリーには欠かせません。これらの歌には、ドラ、タブラ、マンジラなどの伝統楽器による活気のあるリズムが伴奏されます。人々は陽気なメロディーに合わせて踊り、お祭りの精神を表現します。グジャラート州のダンディアラースやビハール州、ウッタルプラデシュ州などでは、その地域特有の民族舞踊が披露され、お祭りを盛り上げています。

 

近年の祝い方

インドの春を彩る色鮮やかな祭、ホーリー。伝統的な方法で祝われる一方で、近年では、若者を中心に、より現代的なスタイルで楽しむ動きが広がっています。

例えば、近年ではDJ音楽に合わせて踊り、ダンスパフォーマンスを楽しむイベントやパーティーが人気を集めています。また、アップテンポなリズムとキャッチーなメロディーが特徴のボリウッド曲もホーリーをさらに盛り上げています。これらは、若者たちの心を掴み、さらに楽しいお祭りにしています。

 

ホーリーを祝う食事

伝統的な料理

お祝い事には、おいしい料理も欠かせないエッセンスです。グジヤは、砂糖漬けにしたナッツとドライフルーツが入った甘い餃子で、インドのホーリーでは有名な料理です。他にも、マルプア(甘いパンケーキ)、ダヒバレッ(ヨーグルトに入った豆のダンプリング)、パプリチャット(カリカリのワッフルにトッピング)などの人気料理があります。

Gujiya(グジヤ)
Papdi Chat(パプリチャット)

 

伝統的な飲み物「タンダイ」

また、飲み物もお祭りには欠かせません。タンダイは、インドの伝統的な飲み物です。爽やかで芳醇な香りのタンダイは、春の訪れを祝うのに人気を集めています。アーモンド、ピスタチオ、カシューナッツ、サフランの糸、カルダモンのさや、時には乾燥したバラの花びらなど、豊富な材料をブレンドして作られ、独特な風味を生み出します。また、タンダイは清涼感を楽しむことができる飲料です。

thandai(タンダイ)

 

地域によって異なるお祝いの形

各地域のお祝いの様子

インドの各地域では、ホーリーを祝う独自のやり方があります。ここでは特徴的な幾つかの地域のお祝いの方法をご紹介します。

  • ウッタル・プラデシュ州バールサナ:色粉をかけに来る男性たちを、女性が棒で叩く「ラトゥマー・ホーリー」が行われます。
  • マハラシュトラ州:若い男性たちが人間ピラミッドを作ってバターミルクが入った壺を割る「マトキ ファド」が行われます。
  • 西ベンガル州:ラダとクリシュナ(神と女神)の像をブランコに乗せて歌を捧げる「ドル ジャトラ(ドル プルニマ)」と、文化プログラム、音楽、踊り、色の塗り合いを行う「バサンタ ウトサヴ」が祝われます。
  • ラジャスタン州ウダイプール:メワール王家が行列をなして、伝統的な民族舞踊、焚き火など盛大な祝祭を催します。

こうした様々なお祝いの方法は、インドの多様で豊かな文化を感じさせます。

Lathmar Holi(ラトマー ホーリー)の様子

 

各地域のお祝いの食事

食事もまた、地域によって様々な違いがあります。

  • マハラシュトラ州:砂糖と豆を詰めた甘い平焼きパン「プラン ポリ」が欠かせません。
  • グジャラート州:ファフダ(ひよこ豆粉のスナック)とジャレビ(甘い渦巻き菓子)が提供されます。
  • ベンガル州:ラスグッラやサンデシュ(カッテージチーズを使ったお菓子)などの甘いものがホーリーの際に楽しまれます。
  • ラジャスタン州:ダル バティ チュルマ(豆のカレーと小麦粉のボール)、ゲワル(甘いクリスピーデザート)が楽しまれます。
Jalebi(ジャレビ)
Rasgulla(ラスグッラ)

 

ホーリーと環境問題

カラフルな粉を掛け合い、歌い踊り、人々が一体となって喜びを分かち合う、インドの春を祝うお祭りホーリー。しかし近年、深刻な環境問題に直面しています。

鮮やかな色を出すために使用される合成着色料は、河川等の水を汚染し、水生の生物にダメージを与えています。また、大量の水を使用するため、多くの地域で水の不足が深刻化しています。この状況を受け、お祭りのあり方を見直し、環境への負荷を軽減しようとする動きが活発化しています。

例えば、色彩に使われる材料は、花、ハーブ、その他の環境に優しい自然由来のものを使用する傾向が高まっています。また、ドライ・ホーリーなどの節水方法も検討をされています。

このようにして多くのコミュニティや組織が、持続可能なホーリーの実践を積極的に推進しています。こうした取り組みは、環境への影響についての意識を高めることにもつながっています。

ホーリー後の路上の様子

まとめ

ホーリーは、文化や国境を超え、幸せ、愛、そして一体感を広げるお祭りです。その起源は古く、人々の心に深く根付いています。現代では、活気に満ちた祝いの場として、インド文化において重要な役割を担っています。

ホーリーが人々に愛されるのは、人々の心を一つにし、平和を促進し、そして生命の多様性を祝福するからです。インドの人々は、環境に配慮した取り組みを積極的に行い、この美しいお祭りを未来へと引き継いでいくことを大切にしています。

 

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Last Updated on 2025-02-19