インド映画と聞いて、どんなイメージを思い浮かべますか。
「歌って踊るシーンが多い」「上映時間が長い」など、いくつかの特徴が思い浮かぶかもしれません。本稿では、インド映画の独特な魅力と、より深く楽しむためのポイントをご紹介します。
インド映画の特徴
年間製作本数、観客動員数、年間興行収益は世界トップクラス
インドの年間映画製作本数は、日本の映画製作本数の3倍の約2000本と世界1位です(「世界の統計2020」より)。
製作本数が多い理由の一つに、インドが多言語国家であることが挙げられます。州ごとに公用語があるため、20以上の公用語が存在し、それぞれの言語で映画が製作されています。
「ボリウッド」や「トリウッド」という言葉を耳にしたことがある方もいるかもしれません。「ボリウッド」とは、ムンバイ(旧ボンベイ)で制作されるヒンディー語映画のことで、ハリウッドをもじって名付けられました。一方、「トリウッド」はテルグ語映画を指します。世界的に話題となった2021年製作の「RRR」は、トリウッドを代表する作品の一つです。
また、年間映画観客動員数も約20億人と、こちらも世界1位です(「世界の映画入場者数国別ランキング」より)。
さらに、2024年の年間間興行収益1,183億ルピー(約2060億円)を超え、日本でも大ヒットした『RRR』はインド映画史上最高製作費7200万ドル(97億円)もかかったと言われています。
数字面から見ても、インドでいかに映画が愛されているか感じられますね。
多くの映画が「ミュージカル」
インド映画といえば、歌って踊るシーンが満載のミュージカル映画というイメージが強いのではないでしょうか。
以前は1作品につき5~8つほどのミュージカルシーンがありましたが、現在は2、3曲しかない場合もあります。
中にはミュージカルシーンがない映画も作られていますが、インド人にとって歌は大切なものなので、ミュージカルシーンがない場合はBGMとして歌が流れます。
なぜインド映画で歌って踊るシーンが多いのでしょうか。その理由は、インドの文化的な背景によるものです。インドの文化では男女の恋愛を表現するシーンを避けるという風習があり、その代わりにダンスシーンを取り入れることがあります。
他にも、インドは多言語国家のため、言語以外でストーリーを表現する目的でダンスシーンをあえて使用しているのも理由の1つです。映画のストーリーや主人公の感情表現を歌やダンスにすることでインド全土に伝えているのです。
上映時間が極端に長い
インド映画は上映時間が長いことでも知られています。3時間近い作品も珍しくなく、中には4時間を超える大作も存在します。
これは、インド映画が複数の要素を盛り込み、物語をじっくりと描く傾向があるためです。観客は映画の世界にどっぷり浸り、長い時間をかけて物語の展開を楽しむことができます。
途中で休憩がある
インドの映画館では、上映の途中で休憩時間があります。休憩中にはスナックを食べたり、ドリンクを飲んだりすることができます。インドの映画館は、観客がリラックスして映画を楽しめるような工夫がされているのです。
インド映画の楽しみ方
ここからは、インド映画をより楽しむためのポイントをご紹介します。
文化的な背景を知る
インド映画には、インドの文化や宗教観が色濃く反映されています。映画をより深く理解するためには、インドの歴史や社会、習慣について少し調べておくことをおすすめします。
※インドの宗教や文化に関する記事は、こちらをご覧ください。
驚きの多様性!インドの宗教と社会(第2回) ~文化・建築編~
驚きの多様性!インドの宗教と社会(第3回) ~食・現代的価値観編~
ファッションに注目する
インド映画では、登場人物のファッションも見どころの一つです。衣装やアクセサリーには、それぞれのキャラクターの背景や心情が込められています。例えば、登場人物の名前からは宗教、カースト、出身地、職業などがわかることがあります。
ファッションにも注目することで、映画の世界観をより深く味わうことができます。
※インドの伝統衣装については、こちらをご覧ください。
映画鑑賞のマナーと楽しみ方
インド映画を、インドで鑑賞する際のマナーもご紹介します。
インドの映画館では、上映前に必ず「国歌」が流れ、全員が起立することが義務付けられていました。しかしながら、障害があるなど起立が難しい方々の声もあり、国歌が流れる際の起立についてはしばらくの間議論が繰り返された後、現在では、上映前に国歌を流すことについては任意となりました。ただ、現在でも映画館では国歌が流れ、起立をして敬意を表すのが一般的です。
インドでは映画館だけではなく、様々な場面で国歌が流れます。例えば、学校でも朝礼で国歌が流れ、子どもたちは幼い頃から国歌を起立して斉唱しています。
Playing of national anthem in cinema halls not mandatory:Supreme Court(The Time Of indiaより)
また、インドの映画館では、観客が一緒になって歌ったり踊ったりすることがよくあります。映画館全体が一体となって盛り上がる雰囲気は、インド映画ならではの魅力です。ぜひ観客と一緒に映画を楽しんでみてください。
まとめ
インド映画は、製作本数の多さ、ミュージカルシーンの多さ、上映時間の長さ、休憩時間があることなど、独特な特徴を持っています。これらの特徴は、インドの多言語性や文化的な背景、国民性を反映したものです。
日本でも多く上映されているインド映画の人気作品を通して、その多様な魅力に触れることができます。インド映画を楽しむ際には、文化的な背景や歌と踊り、ファッションなどに注目することで、より深くその世界観を堪能することができます。
インド映画の世界に触れることで、多様な文化や価値観に触れることができるでしょう。ぜひ、あなたもインド映画の世界を体験してみてください。
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Last Updated on 2025-03-03