実は世界一のベジタリアン大国であるインド。なぜインドにはベジタリアンの人口が多いのでしょうか。本記事ではインド流菜食主義の特徴について紹介します。
ベジタリアニズム(菜食主義)の世界的流行
ベジタリアニズムとは、動物の保護、環境資源の保全、健康的な生活の追及や、宗教・文化・伝統などの様々な目的で肉や魚を避ける食生活のことです。近年は、健康と二酸化炭素排出量削減に効果的であるとされ、注目を集めています。
ベジタリアンの種類
ベジタリアンといっても、その種類は様々。個人の考え方や食生活への取り入れやすさによってその形は様々です。
- ヴィーガン(完全菜食主義):すべての動物由来の食品(はちみつなども含む)を食べない。食品に限らず 衣類や装飾品などの動物性の製品全般を避ける人もいる。
- フルータリアン(果実食主義):果物やナッツ以外は食べない。植物性食品であっても、その植物自体の命を絶やすもの(根菜や穀物)は食べないという考え。
- ラクト・ベジタリアン:肉や魚は食べないが、乳製品は食べる。
- オヴォ・ベジタリアン:肉や魚は食べないが、卵は食べる。
- ペスコ・ベジタリアン:肉、卵、乳製品は食べないが、魚介は食べる。
- ノン・ミート・イーター:動物の肉だけを食べない。動物性でも皮や脂、乳製品や魚介は食べる。
インドのベジタリアン事情
欧米では健康促進や環境保全を目的とした菜食主義の人口が増えているようです。
一方、「世界最大のベジタリアン人口を抱える」と言われるインドでは、宗教・伝統・文化に基づいた菜食主義者が多くを占めます。最近はベジタリアンから雑食主義への移行が進んでいると指摘されていますが、世界的に見てもまだ割合は高く、2022年時点で26.5%がベジタリアンであるとされています。インドでは、ベジタリアンの中でも、乳製品は食べるラクト・ベジタリアンが多くいます。
インドでは、通常、ベジタリアンは「Veg」(ベジ)、ベジタリアンではない人は「Non veg」(ノンベジ)という言い方をします。
出典:Statista 「The Rise (or Fall?) of Vegetarianism」を参考にSHIN EDUPOWER作成
►なぜインドではベジタリアンが多いの?
ベジタリアンが多い理由は、インド社会でのジャイナ教とヒンドゥー教の影響があります。
ジャイナ教では、不殺傷(アヒンサー)を含む大誓(五戒)が確立され、肉食を避ける風潮が生まれました。ジャイナ教の信仰者の中には、地中の虫を殺してしまわないために、玉ねぎやにんにくなど、根菜類をも避ける人がいます。また、明るいうちに食事を済ます人もいますが、これは電気等に寄ってきた虫を誤って口にしないためです。
このジャイナ教の不殺生の教えがヒンドゥー教に取り入れられ、ベジタリアン文化が形成される過程でインド社会に定着したようです。
▶ベジタリアン・ヴィーガン食品の見分け方
インドの法律で、食品にはベジ(ベジタリアン)・ノンベジ(非ベジタリアン)を明示するラベリングが義務付けられています。
写真のようにパッケージには緑や赤のマークがあり、緑の方がベジ、赤い方がノンベジです。ベジは緑の丸、ノンベジは赤い三角で表示するのが最新のマークですが、古いものもまだ市場に出回っているようです。
最新のマーク(ノンベジは赤い三角で表示)
古いマーク(ノンベジは赤い丸で表示)
市販されているものだけでなく、レストランでも、必ずメニューにはベジタリアンかどうかを示すマークがついています。
同じメニューでも「ベジバージョン」「ノンベジバージョン」が選べるようになっているものもあります。このような表示により、ベジタリアンもそうでない人も、安心して同じ店で食事を楽しむことができます。
また、インド国内でヴィーガニズム(完全菜食主義)増加の傾向があります。それに伴い、インドの食品安全基準局(FSSAI)は、消費者が非ヴィーガンの食品と区別しやすくするために2022年に新しいロゴを導入しました。新しい緑色のロゴは、中央に「V」が刻まれた四角いボックスで、その上部に小さな植物があり、下部には「vegan」と書かれています。このデザインは現行のベジタリアン・非ベジタリアン製品用のロゴと一貫性のあるものになっているようです。
しかしながら、ヴィーガンマークはまだ完全には根付いていないようで、マークがプリントされていないヴィーガン製品も未だ多く出回っています。
まとめ
動物の保護、環境資源の保全、健康的な生活、文化・伝統など様々な目的で世界中の人々の食事に取り入れられているベジタリアニズム(菜食主義)。
世界一のベジタリアン大国と言われるインドでは、ベジタリアンの割合が非常に高く、2022年時点でなんと人口の26.5%がベジタリアン!インドでは乳製品は食べるラクト・ベジタリアンが多いようです。ベジタリアンが多い要因としては、ジャイナ教の不殺生の教えがヒンドゥー教に輸入され、インド社会に肉食を避ける文化が定着したことが挙げられます。
インドでは、食品パッケージなどに記載されているロゴでベジ・ノンベジが識別できます。最近はヴィーガンを表すマークも表示され始めているようです。宗教を重んじる人々の食生活を尊重する工夫が見えますね。
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Last Updated on 2024-08-07